私がお風呂に入っている間に、なんとブンジは吐いていた。

 ドライフードがふやけて、食べた時の形がそのままにごぼっとまとまって出ている。

 しかも出渕先輩から預かった手紙の上に見事にクリティカルヒットしていて、私は顔を青ざめた。

「どうしよう。ん、もうブンジめ!」

 すぐに取り除いたが、案の定、封筒はドライフードの茶色い染みがついてしまい、ふやけた状態になった。

 一度ついたこの染みも取れそうにもなかった。

 極力のストレスと、さらに困難な状況に追い込まれ、私は腹が立ってしまい、ベッドで寝ていたブンジを抱き上げ、部屋の外に放り投げた。

「馬鹿ブンジ、なんで大事なものの上に吐くのよ。この大バカ猫。バカバカバカバカ」

 ブンジは突然怒り出した私に怯えていた。

 そして逃げるようにどこかへ走り去った。

「一体どうしたらいいのよ」

 私が途方にくれていると、弟の架(かける)が様子を見に来た。

「姉ちゃん、何を怒ってるんだ」

「あんたには関係ないの」

「なんだよ、機嫌が悪くなるとすぐこうだ。ブンジにもなんか怒ってたけど、八つ当たりはやめろよな」

「何よ、生意気に。こうなったのもブンジが私の大切な物の上に吐くんだもん」

「それは姉ちゃんが悪い。そんな大切なものをその辺に置いとくからだよ。あーあ、ブンジがかわいそう。ブンジだって吐く時は苦しかっただろうに。ブンジの事先に心配しろよ」

「うるさい!」

 私はドアをバタンと閉めた。

 なんだか自分が情けなくなってしまう。

 結局は自分が巻いた種なのに、ブンジや弟に八つ当たるなんて最低だ。

 私は本当に何をしてるんだろう。