その晩、自分の部屋に篭り、机の上に置いた白い封筒と私はにらめっこする。

 時折、ヒラヒラと振ってみたり、蛍光灯にかざしてみたり、意味もなく触っていた。

 椅子の背もたれに極限まで体を逸れさせて天井を仰いだり、座ったまま勢いでぐるっと椅子を回してしまうのは、イライラが募っている証拠だった。

 最後はどうしようもないと大きなため息が出てしまう。

 白い封筒は近江君の手助けになれる代わりに、希莉に余計なことをする災いでもあった。

 希莉が受け取るのを拒否する姿が想像できる。

 でも私は希莉の友達でもあり、もしかすれば私の顔を立ててくれる可能性もあるかもしれない。

 希莉だって、私に頼みごとをしたことがある。

 それは漫画の貸し借りであったり、宿題を見せることだった。

 私は希莉のためだからと思って、嫌な顔をせずにそれらに応じてきた。

 漫画も汚れるのがいやで、本当は誰にも貸したくない性分だけど、希莉は特別だからと無理して貸した。

 それを希莉が誤って、ページを破ってしまったときは少しびっくりだったが、私は希莉の前では笑って許したし、弁償するといわれても断った。

 希莉が友達だと思ったし、希莉のためなら我慢できた。

 やっぱり希莉が好きだし、希莉に頼まれたら私は断れない部分もあった。

 私がこれだけの事をしているし、いつも希莉の言うことを聞いてるから、手紙を受け取るくらい大丈夫かもしれない。

それが持ちつ持たれつの友達というものではないだろうか。

 私は自分が今まで希莉にしてきたことを担保のように見なして、自分の都合のいいようにしか考えられなかった。

「だよね、ブンちゃん」