人の出入りが多い、駅前。

 行き交う沢山の人に飲まれて、誰が何をしているかなど一々気にかける人はおらず、堂々と公然の場でそれは起こった。

 大きな影が私に降りかかり、私はその人物と対峙している。

 その体の大きさに私は圧倒され怯んでしまう。

 上向きに捉えた私の目線の先には、近江君を脅していた上級生が、今度は私の前に立っている。

 近江君と私が入れ替わった、あの虐めの構図がこの時再現されていた。

 さらに取り巻きの上級生たちも私を取り囲み、にやついている。

 こんなにピンチな状況なのに、誰も気に留めず周りの人の波は絶えず動いて、そしてざわめきがこの状況を見えなくしていた。

 要するに同じ制服同士だから友達と思われて、却って不自然に思われなかった。

 しかし、私にとっては驚きすぎて動けない。

 生きた心地もしない。

 走って逃げ出したいのに、足が全く動いてくれない。

 ないないづくしでありえない。

 体格がいいその上級生が、私を見下ろしている様は、まるで蛇と蛙の例えのように、いや、正確に表現したらゴリラと狸かも。

 そんな遭遇が自然界にないように、この場合も目を疑うくらいに全くありえない。