「ちょっと、希莉、初心な千咲都に変なの紹介しちゃだめ。千咲都も本気にしちゃだめだからね。付き合うって軽々しくやっちゃだめ。やっぱり好きな人と相思相愛になってこそ意味があるんだから。誰でもいいなんて言っちゃだめだからね」

 柚実の言い分ももっともだった。

 安易に彼ができるかもと思ってしまったことがとても恥かしい。

 その気持ちを隠し、つい無理をして気取ったふりをする。

「そうだよね。やっぱり知らない人といきなり付き合うのは不自然だよね。そんなの危ない危ない」

「そうそう、千咲都は慌てることなんてないの。いつか必ずいい人が現れるから、その時までとっておきなさい」

 柚実は私の頭を数回ポンポンと叩いて、先生気取りのようになっていた。

「それじゃ、千咲都にいい人が現れますように」

 希莉もまた同じように私の頭を軽く叩いた。

 二人に相手してもらえるのは嬉しいけども、なんだかどちらも私を子供のように扱うというのか、二人の前だと私は立場が弱いように思えてならなかった。

 力の加減が見えて、どこか同等になれない隔たり、そのちょっとした引っ掛かりが胸に違和感を残してしまう。

 二人の前ではあまり強く自分の意見を通せず、いつも二人が決めてしまうことがなんだか時々モヤモヤする。

 でも、そんな気持ちになっても、やはりそれを押し殺して二人の言うことに素直に従って、自分を演じてしまう。

 なんだか私ばかりが我慢するような感じ……

 そう思っていた時、また近江君の視線を感じたような気がした。

 だけど、それは自分が作り出した妄想のような気もして、彼に視線を向けて確認することはできなかった。