毛づくろう猫の道しるべ

 しかし、こんな事してる暇はなかった。

 近江君が家にやってくる。

 私は急いで家路に着いた。



 家に戻ってから、この日のために用意していたものを取り出した。

 図書室で偶然本を見つけてから、興味を持って、そして見よう見まねでやってみたものだった。

 多少ばらつきがあり、まだまだ練習が必要だが、初めてにしてはかなり良くできたと思う。

 ぱっと見た目は、充分役割をこなせるくらい、それは自分の思うような形をしていた。

 それを出窓のところに置いた。

 それは羊毛フェルトで作った猫のぬいぐるみだが、かしこまって座っているブンジを模して作ったものだった。

 ほぼ実物大だから、ここに飾ると在りし頃のブンジが居るように見えた。

 近江君はこれを見てどう思うだろうか。

 私はブンジのぬいぐるみと一緒に近江君がやってくるのを待っていた。

 あれだけ青い空が広がっていたのに、出窓から覗いた空模様が、あやしく曇ってきて一雨来そうだった。

 そしてポツポツと大粒の雨がガラスに付着したかと思うと、あっと言う間に激しく叩きつけた。

 夕立だ。

 遠くでは雷もゴロゴロと低く轟いている。

 すぐに止むだろうけど、近江君がこの時こっちに向かっていないか気になった。

 雨が叩きつけられている出窓を覗いて心配してしまう。

 出窓の雨の滴が激しく流れていく。

 ブンジも雨の日はこの滴を目で追っていたのかもしれない。

 滴だけを見ていると、次から次へと生まれてくる小さな生き物のように見える。

 それは下に流れていくと他の滴も巻き込んで、一本の線となって滑っていく。

 暫くその水滴の動きを目で追い、予測できないいくつもの水の流れ具合に、自分のこれから向かう先を重ねていた。

 そしていつの間にか、激しさも落ち着き、次第にその滴の流れが弱まりだすと、西の空が明るくなりだした。