一学期におどおどしていた私が嘘のように、三人の中で一番リーダーシップを持って動いていた。


 そんな時、他のクラスの男の子から「好きです、付き合って下さい」なんて告白されて、私は驚いた。

 どこで私を見ていて、私の何が気に入ったのか、気になる。

 だから素直に質問してみたら、答えが「なんとなく好みだから」と照れて顔を赤らめていた。

 蓼食う虫も好き好きだと思ったが、なんとなく好みといわれて、こっちは嬉しくもなかった。

 就職活動の面接で動機は何かと聞かれたら、しっかり答える大切さをいきなり悟ったくらいだった。


 まずは気持ちは嬉しいと建前上伝え、そして丁寧にお断りした。

 それから、向こうは気まずくなり、どこかで私を見るとそそくさと隠れたり、挙句の果てに逆恨みで睨まれるようにもなってしまった。

 人間の気持ちの複雑さをまた一つ学んだように思えた。


 二学期も過ぎていけば、気温も寒くなり年末も近づく。

 そして年を越せば新たな幕開けと共に、三学期が待っていた。

 その頃は高校一年生も終わりに近づき、時の流れの速さを感じた。

 たった一年しかないと、アメリカに行く前から焦っていた近江君の言葉を思い出した。

 こんなに時が経つのを早く感じると、やっぱりこの時も必死に勉強している近江君を想像せずにはいられなかった。

 最後の最後まで私も気が抜けない。


 私が次、二年生になる時は、また新たな一年生が私の時と同じように入学してくる。

 私みたいに意気込んでやってくるのもいることだろう。

 あの時の初々しい自分がとても懐かしく思えてしまった。

 空振りだったとしても、あの意気込みがあったから、近江君と出会えたのかもしれない。

 やっぱり大切な思い出だった。


 やがて春が来て、とうとう二年生となり、新しいクラスに振り分けられた。

 私は希莉と柚実と離れてしまい、ショックを受けた。

 クラスが変わっても私達の友情は変わらないとか言ってくれるけど、自分一人だけが離されるのは疎外感を感じる。

 だけど焦りといったものはなく、冷静に受け止められた。

 以前の私ならこうはいかなかっただろう。

 新しいクラスに入り、ここでどんな友達ができるのだろうと思っていた矢先、加地さんがそこに居てのけぞった。

 神様は私にとことん試練を与えたいようだ。

 でも、例え一人になろうと私は堂々としていられるような気がする。

 ボッチでも構わないという肝が据わった気持ちがあった。


 そういう覚悟をしていたが、不思議と人が私の周りに集まってきた。

 なんとかこのクラスでもそこそこ楽しくやっていけそうな気になった。