あっさりと淡々としたやり取りで終わってしまった。

 近江君は出国審査の入り口を未練なく入っていく。

 最後は振り返りもせず、身勝手にさっさと行ってしまった。

 私は振られたんだろうか。

 よくわからない別れだった。


「わが息子ながら、不器用だね」

 後ろから声がして振り返れば、近江君のお母さんがニヤニヤと私を見て笑っていた。

 お母さんが近くに居たのをすっかり忘れていた。


「あっ、ど、どうも」

「別に恥かしがることないわよ。私は例え息子の事であっても、若者同士の恋には寛容よ」

「あの、その、私、そんなんじゃ」

「今更何を誤魔化そうとしているのかしら。告白までしようとしてたの、私は見ちゃったわよ」

「でも、振られてしまいました」

 てへ、ペロっとお茶目に表現しようとしたら、涙が込み上げてこれ以上押さえ切れない感情が溢れてきてしまった。

「あらあら、何も泣かなくていいじゃない。それに息子はあなたを振ってないわよ。あれは相当あなたの事気に入ってるわね」

「えっ?」