人がひっきりなしにどこにでもいるし、また沢山の荷物を持っているから、すぐに通路に邪魔が入ってまっすぐ進めなかった。

 思う存分突っ走りたくても、込み合った空港内では憚れ、ピンボールのボールになったような気持ちで、前に人が現われる度にあちこち跳ね返る。


 そして、やっと空港カウンターに来た時、私の息は上がっていた。

 気を取り直し、チェックインの列を眺める。

 そこに近江君が居ないか探した。

 絶対に居ると信じて確かめたが、居なかったとわかったとき、私は絶望してしまう。

 すでにチェックインを済ませているのか、それともまだ来てないのかもわからない。

 ここで待っていても、辺りを歩き回っても、お互いの行動にずれがあれば決してそれは交わることがない。


 どうしようと判断に困っていたら、人ごみに紛れて車の運転手の三井さんが歩いているのを見つけた。

 私はジャックポットを当てた気分で思わず走り寄った。


「三井さんですよね」

 三井さんはキョトンとしてたが、私を見ているうちに誰だが思い出してくれた。


「ああ、あの時、坊ちゃんが連れてきたお嬢さん」

「あの、近江君は?」

「晴人坊ちゃんですか。今、出国審査に向かわれたところです」

「えっ、やっぱりすでにチェックイン済ませてたんですか」

「でも、まだ走れば間に合うかもしれません。オーナーが見送ってるはずです」

「オーナー?」

「ぼっちゃんのお母さんのことですよ。とにかく早くおいきなさい。私もオーナーに電話して、ぼっちゃんを引き止めるように連絡します」

 三井さんはすぐにスマホを取り出し電話を掛けた。

 私は繋がったかどうか確認する前に、走り出していた。

 お願い、間に合って。


 出国審査の入り口では人だかりができていた。

 そこに近江君のお母さんらしき、派手な人が目に入り、ちょうど電話を耳に当てて何かを話している。

 きっと相手は三井さんだと思った。

 その出国審査の入り口付近で近江君を見かけたと思ったとたん、その姿は入り口の方へ入っていって消えてしまった。


「近江君! 待って」

 私が叫んだ時、近江君のお母さんが本の少し早く近江君を呼び止めていてくれた。

 そして近江君は引き返してきた。

 そこに私が弾丸のように突っ走ってきたもんだから、非常に驚いて目を丸くしていた。

「遠山!」

「近江君!」