「だったら、早く行かないと、間に合わないぞ。くそ、なんかまたハルに負けちまった」

 私がここで近江君への思いを意思表示したことで、草壁先輩には充分な理由になったのだろう。

 断りのダメだしも、草壁先輩は、はっきりと私が近江君の事を好きだと言わなかったから、あんな風にやり直しと何度も言ってきたのかもしれない。

 また、近江君が私の事をどう思っているのか探るために、草壁先輩は色々と挑発な態度を取って試していたとも考えられる。

 これもまた思い当たることが多々あった。


 草壁先輩を見れば、すっきりとした顔で笑ってから、私にウインクをしてくれた。

 早く近江君に会いに行けといわれているようで、私もいてもたってもいられなくなった。

 櫻井さんに近江君の目的地先を訊けば、シアトルと返ってきた。

 どこにあるか正確には分からなかったけど、聞いたことはあった。

 私はすぐさま駆け出し、駅に向かった。

 お金があまりないので、タクシーは使えないのがもどかしい。

 腕時計を見て、間に合うかハラハラしながら、空港を目指した。


 電車がノロノロと感じ、空港までの道のりがとても長くて気だけが焦る。

 時計とにらめっこしながら、絶対間に合うと信じて、私は電車に揺られていた。

 いざ近江君に会って見送るとき、何を言えばいいのだろう。

 色んな言葉を頭の中で思い浮かべながら、まだ迷いがあった。

 だけど、会えばきっと自然に言葉が出てくるはず。

 今度こそ正直な気持ちを伝えたい。

 今は間に合うことの方が先決だった。

 そして空港が近くに迫り、空に飛行機が飛んでるのを見たときは、私のドキドキは胸を突き破りそうに激しく打っていた。