部室に入れば櫻井さんを囲んでみんなが送別会をしていた。

 大勢が部室に入り込んでるから部室はとても込み合って狭苦しくなっていた。

「おっ、千咲都ちゃん。やっときたね。こっちこっち」

 草壁先輩が声を掛けてくれたので、皆の輪の中に入りやすかった。

 これからみんなで少しずつ出し合ったお金で買ったプレゼントを櫻井さんに渡すところだった。

 宗谷先輩が代表として、ラッピングとリボンで包まれた細長い箱に入ったプレゼントを手にして、櫻井さんに差し出した。


「今までありがとうな。アメリカ留学しても頑張れよ」

 次々にみんなも「ありがとう」を口にして、櫻井さんがプレゼントを受け取ると、一斉に拍手が湧き起った。


 櫻井さんは嬉しそうに、丁寧にラッピングをはがしていく。

 箱の蓋を取ったとき、櫻井さんは感激して喜んでいた。

 それはサッカーボールのチャームがついたネックレスだった。

 早速自分で身につけ、大事そうに胸元を触れていた。


「サッカー部の思い出と共に大切にするね。みんな本当にありがとう」

 贈った方も嬉しくなる瞬間だった。

 その後は、ジュースで乾杯をし、思い思いに櫻井さんと会話をして、それが済んだ人達はそれぞれ帰って行った。

 私もまた、櫻井さんと向き合って挨拶をする。

「一緒にもっと過ごしたかったですけど、櫻井さんの分もしっかりと頑張ります」

「遠山さんは無理やりここに連れてこられて、マネージャーにさせられちゃったのよね。私も代わりがいないと困ったから、かなり切羽詰って押し付けちゃったわ。だけど、来てくれて本当にありがとう」

「今思えば、成り行き上そうなりましたけど、これも何かの縁だったと思えば、意味があることのように感じます」

「そう思ってくれると私もほっとするわ。この先もしっかりとマネージャーをやってね」

「はい。先輩も留学頑張って来て下さい。それでいつ出発されるんですか?」

「来週の日曜日よ」

「ひまりちゃん、俺達見送りに行くからね」

 他の部員がノリよく答えていた。

「あれ、来週の日曜日は試合があるんじゃないんですか?」

 私が言った。

「そんなのないよ。それとも急に入ったの?」

 草壁先輩が壁にかかっていたカレンダーを見てチェックした。

 なぜ草壁先輩が慌ててスケジュールを確認するんだろう。

「先輩、近江君に見送りに行くって言って、その日は試合があるっていったんじゃなかったんですか?」