そして終業式の日。

 校長先生の挨拶を交えた式を終えた後、教室で先生が通知表を配り出した。

 一人一人名前を呼ばれ、次々に渡されていく。

 明日から始まる夏休みを前に気持ちもリラックスしていて、教室内は和気藹々とした和やかな雰囲気に包まれていた。

 全てに通知表が行き渡ったところで、先生が近江君の留学の話を持ち出した。

 誰もが驚き、近江君に視線が集まった。

 普段から友達付き合いのないために、教室はざわめくだけで、誰もそのことについて直接本人に突っ込むことはなかった。

 先生が一言「頑張ってこいよ」と激励し、近江君も「ありがとうございます」と返す。

 たったそれだけでお知らせは終わってしまった。


 私はその間、俯いて机の上をぼんやり見つめていた。

 希莉と柚実が私をちらっと見ていたが、私が落ち着いている様子にすでに知っていたと気がついたみたいだった。

 私も最初知った時はかなり動揺して、素直に応援できなかった。

 でも今は笑顔で送り出そうと構えていた。

 近江君を見たら泣きそうになってしまいそうに、私は刻一刻と迫るお別れに悲しみ打ちひしがれていた。


 チャイムが鳴ったとき、夏休みが始まったと喜んでいる人達とは反対に、私はしんみりとしていた。

 近江君が教室を出て行く前に、私は素早く彼の元へ寄った。

 泣かまいと踏ん張って向き合ってる私に、近江君は静かに口許を上げて微笑んでいた。

「どうした、遠山?」