期末テストがとうとう始まり、寝不足が続く毎日だったが、近江君は新聞配達を続けながら、期末テストに挑んでいたから、私は頭が下がる思いだった。

 それに自分でも言っていたが、近江君は不自由ない裕福な環境なのに、なぜ新聞配達をしているのかも謎だった。

 毎朝の早起きなんて辛いし、いつも勉強に忙しい近江君が睡眠時間を削ってまで新聞配達をする理由。

 その新聞を読んでいる父の前でふと口にした時、父はさりげなく「早起きは三文の得」と言った。

 そんなことわざで締め括っていいものだろうかと思案していたが、きっと近江君には目標があり、それを続けることで自分の得につながる根拠となったのかもしれない。

 あれは朝早く起きる修行のうちで、精神を鍛えていたとなんだか思えてくるから、それもありえる。

 修行僧かと思いつつ、近江君ならやりかねないと納得していると、父がページを捲ったそのリズムでまたさりげなく言った。


「彼、もうすぐ辞めるそうだが」

「えっ、なんで知ってるの?」

「朝、少しだけ話をしたんだ」

「いつの間に。私ですら寝てたというのに」

「やっぱり本人に失礼を詫びたかったからね」

 近江君は謝罪を受けて爽やかに笑っていたという。


「しかしだな、その、交際を認めたという意味ではないぞ」
 
 言う事は言っておきたいと咳払いをしながら、ここで父親らしい頑固な部分がでてきた。


「あのね、近江君とはなんでもありません。ただの友達なの」

「えっ、お付き合いしてないのか?」

「してません」

「そうか。なら別にかまわん」

 父にはあっさりとこの問題は解決してしまった。

 気が楽そうに近江君が配達した英字新聞を読んでいた。

 しかし、私の中では父のようにはいかなかった。
 

 期末テストが終わり、答案も返ってきて、あとは夏休みを待つだけという一番気楽な日々が続く。

 今回のテストも、近江君は上位に名を連ね、その頑張りぶりは健在だった。

 私といえば、極端な結果で教科によってばらつきが激しかった。

 それでも自分では頑張った方である。