そんな私の行動を希莉は面白半分にからかってくる。

「千咲都って、もしかして近江君に気があるの?」

「えっ、やだ、ち、違う」

 私の困る顔を楽しむように、希莉がエスカレートして肘をついてきた。

「あれ? 慌てて否定するところが怪しいな」

 柚実も、さらりと突っ込んでは、同じようにからってきた。

「ちょっと待って、違うの。あのね、彼いつも休み時間は一人で机に向かってるから、なんでだろうと思ってさ。虐められてる訳じゃないよね」

 私は声を落として、そして真剣に落ち着いて話した。

「そういえば、一人だね」

 希莉は言われて初めて気がついたみたいだった。

 希莉にとっては興味のない男の子はどうでもいいらしい。

「常に勉強してるみたいだよね。中間テストも近いから、余程いい点数を取りたい、がり勉なのかも」

 柚実も全然興味を持ってなさそうだった。

「だけど、私達が知らないだけで、もしかしたら本当に虐められてるのかも」

 あまりにも一人でいるのが不自然だから、虐めの可能性が無視できなくて二人にも真面目に考えて欲しかったのだが、教室でそのような行為に思い辺りがない希莉と柚実は首を傾げるだけだった。