「お前さ、なんか無理してるように見えるんだよな。まあ別にいいけどな」
「えっ?」

 近江君はその後、私が側に居ることを忘れたかのように本を開いた。

 私は戸惑いつつも、足を前に動かしてその場から去った。

 暫く近江君が言った言葉の意味を考えていた。


 そんな事があったから、柚実がこっちを見ていると指摘したとき、なぜか自分が笑われているんじゃないかと感じてしまった。

 近江君が言ったあの言葉は、希莉と柚実の側にいるのが釣り合ってないと思ったのかもしれない。

 近江君にしてみれば、かわいい希莉と柚実のどちらかに気があって、そこに私の存在が目に付いて痛い奴に映ったのだろうか。

 そんな風に思われているとしたら、なんだか惨めだった。

 でも一度希莉と柚実と行動を共にしたら、私はもう抜けられない。

 二人が仲良くしてくれる以上、私だってきっとまんざらでもないんだ。

 妙なプライドが無駄な虚勢となっていく。

少しくらいの背伸びをしたっていいだろう。

 休み時間のチャイムがなって、自分の席に戻ろうとしたとき、私は近江君を一瞥した。

近江君は素知らぬ顔で、本を読んでいる。

 その周りだけ、全く色が違う何かを私は感じた。