ブンジは飼い主の贔屓目を抜きにしても、非常にハンサムでかっこいい。

 そのブンジが時折顔を上げては、私の様子を伺っている。


「ブンちゃん」


 私が名前を呼べば、じっと顔を見るが、その後、にこっと笑っている私に愛想ふるまうことなく、またアンモニャイトになっていた。


 それは私への期待半分、あてつけ半分の気持ちの現れだった。


 本当は餌が欲しいけど、私が朝の餌係ではないのを知ってるので、纏わりついても無駄だとひたすら餌を与えてくれる母を待っているのである。

 その辺は猫の本能なので仕方がないが、普段のブンジは私にとてもよく懐いていて仲は結構いい。

 まあ、飼い主の希望も入って愛されていたいと思いこんでいる節はあるけども。


 こういうそっけない態度の時は、お腹が空きすぎて無駄な労力を使いたくないだけだと私はしっかりと理解している。

 だから、そっと頭を撫ぜてやるとすぐに喉をゴロゴロ言わせていた。


 この音が聞いている者にもまた心地良い。


 まだ外は暗く、父も母も弟も起きてない家の中は静かだったから、ブンジのゴロゴロの音は部屋に響くように良く聞こえた。

 私もできるだけ物音を立てずにこそこそして気を遣う程、まだ辺りは物音を立てるなというくらい静寂しきっていた。


 そんな静けさの中、不意に、ブンジの耳が何かの音を聞き取ったようにピクッと動いた。