私の涙腺が弱くなり、また涙が溢れてきてしまう。

 それを見られたくなくて、私は踵を返して外に出た。

「おい、待てよ、遠山」

 近江君は靴を履き替え、そして走って私を追いかけてきた。

 学校の玄関先、大勢の人が居る前で近江君は私の腕を掴んだ。

「離してよ」

「もしかして、ブンジに何かあったのか」

 どうして近江君はすぐさま分かるんだろう。

 涙が溢れて止まらなくなった私を見て、近江君は溜息を一つ漏らした。

「そっか、もうブンジはいないのか」

「これでわかったでしょ。私の事はほっといて」

「悲しいのは分かるけど、遠山が自棄になって壊れることないだろ」

「自棄になってなんかないわ。大切なものを失ってやっと気がついただけよ。全てがあまりにもちっぽけだったことに。それで自分でもそんな事に振り回されていてバカだったって思っただけよ」

「でも、俺、遠山の気持ちすごく分かる。その何もかも壊してやりたいっていうどうしようもない絶望感も、ちっぽけでつまんない世界とかも」

「えっ」

「そしたらとことん破壊してやろうじゃないか。遠山のその身も心も。俺手伝ってやるよ」

 近江君は私を引っ張って先を歩き出した。


「ど、どこへ行くの」

「いいからついて来いよ」

 近江君は私に悲しみを思いだせないくらい、強く引っ張っていく。


 身も心も破壊するってどういう意味なんだろう。

 近江君に引っ張られている自分の手を他人事のように見つめていた。