二時間目の教科書とノートを取り出し、それを力強く机に叩きつけた。

 その音に二人はビクッとして、言葉に詰まっていた。

 その後、私は二人から視線をそむけ、焦点を合わせずに正面を見つめる。

 やがて、二人は去っていったが、これで堂々と私はボッチになってしまった。

 もうそれでもいい。

 全てが投げやりに、馬鹿馬鹿しくて、周りの人が何を思おうとすっかり関心がなくなってしまった。

 私の心は空洞で、いつまでも風が自由に吹きすさび、冷たく通り抜けていく。 

 相田さんが私の側に来そうになった時は、素早く立ち上がり、私は教室から出て行った。

 その後は廊下の窓で外を見て、チャイムが鳴るまで過ごした。


 昼ごはんの時が一番やっかいだったが、とりあえずはグループ内に身を置いて、一言も喋らず一心不乱でお弁当を食べていた。

 そのうち、周りが私の様子がおかしいと、みんなで目配せをするように暗黙で訴えていたが、それすらどうでもよくて、お弁当を食べ終わるとさっさとその輪から抜けた。

 その後はぶらぶらと校舎を回り、適当に時間を潰していた。


 この時もブンジの事を考えると、どうしても目頭が熱くなって涙が徐々に溢れてくる。

 それを拭い、私は泣かないように踏ん張っていた。

 そんな時に常盤さんとエセ櫻井さん親衛隊に出会い、睨みをぶつけられた。

 それを堂々と無視し、平気で通り過ごした。

 後ろで常盤さんが何か叫んでいたけど、その言葉の意味すら遮断してただの雑音になっていた。

 とりあえず、振り返ってみれば、橘さんが常盤さんを抑えている。

 いつか助けると約束したことを覚えていたようだった。

 別に今更感謝する事もなく、私はさっさと離れていった。


 次に草壁先輩が目ざとく私を見つけて声を掛けてきた。

 気を遣うのも面倒くさくて、感情のないままに突っ立っていた。

「千咲都ちゃん、どうかしたの。なんか雰囲気違うけど、大丈夫かい?」

「いいえ、大丈夫ではありません。草壁先輩ももう私には構わないで下さい」

「どうしたんだい、急に冷たくなって」

「そういえば、草壁先輩は猫と犬どちらが好きですか?」

「えっ、そ、それは犬だけど」

「犬ですか。だったら、私は草壁先輩とは合いません。私は猫が好きな人じゃないと付き合えません。これは立派な理由ですよね」

「えっ?」


 後は一礼してから、去っていく。

 後ろで名前を何度も呼ばれたけど、振り返りはしなかった。

 上手くいかないのなら、反対に自ら壊してしまえばいい。