ブンジの事を思うと中々寝付けず、暫く箱を抱えてソファに座っていた。

 何度も名前を呼んでは、生きてた頃のブンジのゴロゴロと鳴った喉の音を思い出して、胸を詰まらせた。

 涙はその度に込み上げてきて、ずっとジュクジュクが止まらなかった。

 母が心配して様子を見に来た。

 「早く寝なさい」と一言行った後、母もブンジの亡骸をもう一度見て、涙ぐんでいた。

 その後は黙って寝室へ戻っていった。

 私はブンジを枕元に置き、寝袋に包まって横になった。

 最後の最後までブンジは私に寄り添って来てくれたことを思い出しながら目を閉じた。

 眠りは浅く、ぐっすりとできず、少し眠っただけで目が冴えた。


「今何時だろう」

 その時、再び朝の新聞配達のバイクの音が聞こえてきた。
 

 ブンジがいつも気になって出窓から覗いていたけど、今日からはそれもできなくなった。


 暫くバイクの音が近くで聞こえたが、新聞を配達し終わると、どんどん遠ざかって行った。

 初めてバイクの音を聞いた時は私の入学式の朝だった。

 あの時は気合を入れて、高校生活をエンジョイしようと構えていた時だった。

 それが裏目に出て、最悪の日々に変わり、問題ばかりにぶち当たった。

 そして今日からはブンジの居ない日が始まる。

 全てがどうでもよくなって、抱え込んでいた問題もバカらしく思える。

 ブンジを失ったことで、一気に世界がしらけてしまった。

 自分が悩んでいたことがちっぽけで、そんなちっぽけなことで、ブンジに八つ当たったり、構ってあげられなかったり、ほんとにバカだった。

 あっけない、あっけなさすぎるブンジの死。

 寝ているだけに見えるのに、ブンジは息をせず、体は冷たくなって動かない。

 体だけを残して魂はどこかへいってしまった。

 そしてその体も焼かれて消えてしまう。

 鼻の奥がつんとして、体が震えて目に涙が溜まる。

 昨晩から泣き通してはれぼったい瞼を私は何度も擦っていた。