私は放心状態になり、側にあった椅子にどすんと座り込んだ。

 一体何をしたかったのだろう。


 今日という一日は、全てが悪い方向に行っているように思えてならない。

 落ちていたボールを手にして、私は力任せに磨きだした。

 ボールはキュッキュと痛くて悲鳴を上げているようだった。



 部活が終わった後、寄って来る草壁先輩をかわして、マネージャーの事で聞きたいことがあるからと理由を述べて、櫻井先輩と一緒に帰りたいと申し出た。

 櫻井さんは嫌な顔をせず、私の申し出を快く承諾してくれた。

 その背景に近江君がどんな風に一年の教室で過ごしているのか私の口から聞きたがってもいた。

 私は櫻井さんをまじまじと見つめ、自分が手に入れられないすぐれた能力と容姿に嫉妬してしまっていた。


 昨日まではそれが憧れで、崇めていたのに、この変わりようはなんなのだろう。


 年上でもあり、学校の先輩で最初から同等ではない隔たりがあっても、この瞬間はどうしようもないコンプレックスに私は苦しくなる。


「遠山さん、さっきから私をじろじろ見てるけど、どうしたの」

「いえ、今こうやって一緒に歩いていることが信じられなくて」

「遠山さんは本当に真面目ね。その一心不乱に一途になれるところも、素直だからできるのね」

「いいえ、私は素直なんかじゃないです」

「いいのよ、そんなにムキにならなくても。でもそういうところは私は好きだな」

「いいえ、私なんか最低です。本音と建前が全然違って、ずるいです」

「何をそんなに自分を卑下してるの? 面白いわね。だけど、もっと自信持って。遠山さんは秘めたものを持ってると思うわ。私が留学から帰ってきたら、きっとあなたは変わってる。そんな気がする」

「櫻井先輩はどうして、留学しようと思ったんですか?」

「そうね、それはチャンスを生かしたいって気持ちがあったから」