キスをするのもマネージャーの仕事? 

 そんなとんでもないローカルルールをぶつけられて、さらに草壁先輩の顔が近づいて、これは焦る。

 私はすぐさま持っていたサッカーボールを、草壁先輩の顔にむぎゅって押し付けてしまった。


「うげっ」

 草壁先輩は力強く押し付けられて固まっていた。
 

 その間に椅子から立ち上がり逃げようとするが、草壁先輩はすぐさま私の腕を掴んだ。

 その足元で、ボールが床に軽く跳ねて転がっていった。


「この扱いはないだろう。酷いな。仮にも俺は先輩だろ」

「でも、私そんなのできません。は、離して下さい」


 私の手を取ったまま、草壁先輩は椅子から立ち上がった。

 その身長の差から、私を上から見下ろしている。


「千咲都ちゃん。もっと肩の力を抜きなよ。俺のキスを受け入れたら、君も考えが変わると思うんだけどな」

「む、む、無理です」

「それって、好きな人が居るって事かい?」

「えっ」

「この俺のキスを拒むくらいだ。余程の理由がなければおかしいじゃないか。他に俺を納得させる理由があるのなら、それを答えなさい」

 まただ。

 付き合うことを断ったときも理由を求められた。