近江君は本当に猫を被ってたのだろうか。

 私にはどうしてもそう思えない。


 休み時間を利用して勉強し、実際テストでもいい点数を取って常に努力している。

 あれが本当の近江君の姿だと思う。


 私に接してる時だって、嘘偽りなんかなかった。

 だから心地よくて私は近江君が気になって──。


「ねぇ、千咲都ちゃん。今は部室に誰もいないし、二人だけのいいチャンスだと思わないかい?」

「はい?」

「それでは、マネージャーにお仕事の依頼をします」

「は、はい」

「キスお願いします」

 草壁先輩は顔を近づけてきた。


「えっ、えーーーーー! ちょ、ちょっと待って下さい」

「ほら、俺達の他に誰もいない部室。そこにかわいいマネージャーとエースの選手。すごいいいシチュエーションじゃない。俺、興奮してきちゃう」

「草壁先輩! 冗談はやめて下さい」

「これもマネージャーの仕事のうちだよ」

「うそっ!」

 草壁先輩がまじかに迫ってきていた。