「なぜ、すぐに教えてくれなかったの?」

「はっ、何を?」

「何をって、留学の話」

「別にいつ言おうと関係ないだろ。どうせ夏休み前には担任が言うだろうし。それを遠山が知ったからってどうなるんだよ」

「それは、そうだけど、でも、留年とか留学とか、『留』がよくつくね」

「ほっといてくれ。余計なお世話だ。それに、留学は一年だから、また学校に戻ってくるしさ、お別れって訳じゃないぜ」


 私は何を問い詰めてるのだろう。

 心の拠り所だった近江君が二学期から居なくなることが寂しいから、その気持ちをただぶつけてるだけだろうか。

 なんでこんなにもモヤモヤするんだろう。

 自分でもよくわからない。


 今、留学することを頑張ってと応援しなければ、私は今後近江君と今迄のように接する事ができないような気がする。

 だけど、なぜかイライラして、素直に『頑張って』と笑って言えなかった。


「一年留学しただけで、英語って話せるようになるのかな。ならなかったら無駄になりそう」

「お前、何が言いたいんだ。俺に留学は無理だって言ってるのか」

「そうじゃないけど……」