安心感から急に笑顔になって、近江君を見れば、なぜか近江君が笑ってなかった。

 まさか近江君、櫻井さんが留学することが寂しいのだろうか。

 私が再び戸惑いだしたその時、櫻井さんの言葉が脳天を貫くように耳に届いた。


「それからね、近江君も一緒に留学するのよ」

「えっ?」


 私は聞き間違えたかと思った。


「それでね、準備の事で色々と話をしてたの」

「おい、準備は期末試験が終わってからでいいっていってるだろ。そっちの方が今は大事なんだから……」

 近江君は気まずく、伏目がちに私から目を逸らした。


 近江君が留学。

 この夏、アメリカに行く。

 そして二学期からは教室に近江君が居ない。


 私はどのようにリアクションを取るべきなのだろうか。
 
無理してでも笑う、それとも、嘘! と驚く、それとも、嫌だと泣き叫ぶ、それとも、なんでずっと黙ってたのよと怒る、それとも、それとも……

 どれも私の取りたいリアクションだった。

 だけど水を浴びせられたように驚くことしかできなかった。