そして今日もまた目覚まし時計より早く目が覚めた。

 雨はまだ引き続き降ってる様子で、静寂な部屋で微かな雨音が聞こえていた。

 時計を見ればまだ5時前。

 そして尿意を催し、仕方なく起き上がった。


 階段を下りたその先の玄関前で、バイクのエンジンが聞こえていた。

 いつかの新聞配達員に違いない。

 朝が早い仕事なだけで大変なのに、こんな梅雨時の雨の中でも配達しないといけないのがお気の毒。

 それでもよく続くと思う。

 バイクの音は次第に遠くなり、次の配達場所へと向かった様子だった。


 起きたついでに、配達ほやほやの新聞を取りに玄関のドアを開けた。

 案の定雨が降っている。


 玄関先の軒下に放り投げられた新聞を拾い上げ、顔を上げれば出窓にブンジが座って私を見ていた。

 暗い中でも白っぽい部分が、ぼわっとその姿が浮き上がるように見える。

 ブンジはいつもこんな風に新聞配達員がバイクで来る度に、出窓から見てるのだろうか。


 窓についた雨の滴と猫の形が合わさって幻想的に見えた。

 ブンジも私を見つめているようだった。


 じっとそれに魅入っていたとき、尿意が迫ってぶるっと身を震った。


「こんなことしてたら、もらしちゃう」

 慌てて家の中に戻っていった。


 用を足した後は完全に目が覚め、ソファーでブンジを膝に乗せてそのまま空が明るくなっていくのを見届けた。

 今日という日は何が待つのか、気分が晴れないままでいると、目の瞼がピクピクしだした。

 何で知ったか忘れたが、瞼が勝手にピクピク動くと不吉なことが起こる前触れと聞いた事があったから不安になった。

 その時は気のせいだと思うようにして、身を奮い起こしたけど、それが本当に不吉な前兆だったとは思わなかった。

 ただの偶然の重なり、迷信に過ぎないとは分かっていても、私は突然の事にどう処理していいかわからなくなった。

 そして私は壊れてしまった──