風で横槍に雨が降ってきた。

 まっすぐに上から落ちるだけでいいのに、これは傘を傾けても足元が濡れてしまう。

 一層のこと傘を放り投げて濡れてしまおうかと思うくらい、全てを水に流して振り出しに戻りたくなった。

 考える事がどんどん増えて、自分でも手に負えなくなってきている。

 
 私の隣で堂々としている草壁先輩がこの時ご主人様のようで、私は鎖に繋がれた犬のように感じた。

 因みに私は猫が好き。

 自由気ままに、自分のペースで行動し、そして時には甘えたいとスリスリと身をよせる。

 だから犬よりは猫の方になりたい。

 草壁先輩は犬と猫どっちが好きなのだろうか。

 訊いてみたかったけど、今はそれを訊けるような状態ではなかった。



 やっとの思いで家に戻ってきた時は、どっと疲れていた。

 ここ最近ずっと疲れが取れてないようで、何もする気が起こらなくなってしまう。

 来月に行われる期末試験の準備もしないといけないし、その後は高校始まって初めての通知表が待ってるし、やはり頑張ってるところを両親に見せたいとも思う。

 だけど、本来勉強をしなければならない高校生活ではあるけど、それプラス充実した楽しい青春も送りたい。

 それなのに、すでに行き詰ってしまって、試練ばかりにうんざりしてきた。


 どれも上手くかみ合わず、ひたすら辛い。

 こんなはずではなかったのに。


 キッチンで冷蔵庫から冷たい飲み物を出して、それを心行くまで飲んでから、ブンジを探した。

 ブンジは居間のソファで大人しく横たわっていた。


「ブンちゃん、おいで」

 面倒くさそうに頭を上げて私を見ていたが、ソファーから動こうとしなかった。

「ブンちゃんにも無視されちゃうの?」

 ブンジに近づいてそっと頭を撫でてやると、いつものゴロゴロが聞こえない。

 寝てるところを邪魔して機嫌が悪くなっているのかもしれない。

 じっと私を見つめている目が責めているようにも見えた。


「はいはい、邪魔してごめんね」

 ブンジをそのままにして、私は自分の部屋に行った。



 毎朝、教室に入ってどんな一日になるのか考えるのが怖い。

 無事に授業が全て終了しても、その次は部活が気がかりになる。

 そのうち学校へ行くのが嫌になりそうだった。

 まさか、こんなことで不登校……

 毎日溜息を吐きながら時間が経っていく。

 寝つきも悪くなるし、ぐっすりと眠れず夜中に何度か目が覚めたりする。