私はなんて答えていいのかわからなかった。

 草壁先輩と近江君を比較することなどまずできない。

 草壁先輩に好意をもたれることも、困惑の何ものでもない。

 思考も言葉も伴わないで、居心地の悪さだけ感じて、喉につまった喘ぎ声を低く出すことしかできなかった。


 私が何も言わないでいると、草壁先輩は気分を害した顔になった。

 それを見るとなんだか焦って、取り繕わなければならない気にさせられた。

 しかし焦れば焦るほど、喉の奥から反射した音だけが漏れた。

「ハルの過去を知らないから、千咲都ちゃんはハルにはいいイメージしかないんだと思う。勉強もできるし、真面目腐った風貌だし、はっきり言ってあれはダサい! あのハルが昔、金髪で荒ぶった不良だったなんていっても、君にはピンと来ないんだろうね」

「その不良ってどういうことですか?」

「俺が言えるのはここまでだ。これ以上言ったら、俺、ハルを貶めようとしてるみたいじゃないか。千咲都ちゃんが、ハルの事を気にするから、ヤキモチやいてしまった。だけどさ、よーく考えて。俺、千咲都ちゃんに似合う男になるからさ」

「えっ、それ、レベル落とすってことですよ」

「はっ、どうしてレベル落とさないといけないんだ。俺はもっと誠実で、千咲都ちゃんに好かれる男になるって言ってるんだけど」

「勿体無いです。私なんて、そんな」

 本当に心からそう思った私の対応だった。

 でもそれに反して草壁先輩は違った。