「あくまでも理由を言わないんだね。頑張るのはいいことだけど、いつかバテちゃうよ。俺だって、見栄はってさ、自分で自分を縛って、ほんとバカだったって思う。その間、見えない鎖に縛られたようで本当に苦しかった。でも千咲都ちゃんに話してやっと吹っ切れて楽になった」

「そういえば、近江君も過去と今とでは違うようなことを言ってませんでしたか」

「なんで、そこでハルの話になるんだよ」

「あっ、すみません」

「別にいいけどさ、でも俺の口から言うより、ハルに直接聞いた方がいい。あいつはあいつで苦しんだだろうから。それよりも俺の事を見てくれ。俺ばかりが先輩って崇めて気を遣うけどさ、ハルと俺は同じ年だぜ」

 草壁先輩の事よりも近江君が苦しんだことの方が、私はこの時気になっていた。


「千咲都ちゃん、どうしてもハルが気になるのかい?」

「えっ、それは」

「俺よりも?」

 草壁先輩は急にシリアスな表情を私に向けた。