毛づくろう猫の道しるべ

 しかしどことなく、見られて当たり前という嘲笑うような感じもあった。

「そうかな」

 柚実は否定されて納得いかない様子だったけど、見てたからと言ってどうこうしても仕方がないので、それ以上何も言わなかった。

 希莉はもう一度、その男子の方に振り向いたが、すぐにまたどうでもいいとばかりに新しい話題を振った。

 その後は誰もその男子については何も言わず、何事もなかったかのように希莉は笑い、柚実はクールに微笑し、そして私はおどけていた。

 でも私は暫く、その男子の様子が気がかりだった。


 入学式が終わり、新しいクラスで大体の友達のグループが定まりつつあるこの時期、誰もが焦るのにその男子は友達を見つけようともせずに、大概一人でいた。

 休み時間は机に座り、本を読んでいるし、みんなと溶け込もうとする様子が全くなかった。

 何人かの男子生徒は時々話しかけたりはしてるが、別にそれを嫌がるわけではなく、普通に接してはいるのに、その輪に入ろうとせず常に自分のスタイルで過ごしている。

 落ち着きを払い、周りに流されずにいるその姿は、大人びて精悍に見えるのに、髪が適当に切ったように短すぎてダサく、顔とあってないように思えた。

 もう少し髪を今風に伸ばしたり、毛先をうまくスタイリッシュにすればいい感じに思える顔つきなのに、なんだかおしゃれには無頓着そうだった。