毛づくろう猫の道しるべ

 柚実も「千咲都は正直でよろしい」とわざとらしく言うと、またおかしくなってその場が盛り上がった。

 なんでもないことだけど、このノリが友達の証として楽しかった。

 不安になるのはこの関係を保ちたいから、失うのが怖いだけ。

 仲良くなればなるほど、私は幸せと同時にやってくる、その裏側の不安を考えるのが悪い癖だった。

 とにかく今はこうやって笑っていようと、顔の筋肉が痛むほど、にこやかに固定されていく。

「ねぇ、ねぇ、さっきから視線を感じるんだけど、もしかしたらあそこにいる男子、こっちをみてないかな」

 柚実が声を落として言った。

 それで私達は一斉に柚実が示した方向へ振り向いた。

 そこには、机に一人で座っている髪の短い男子がいた。

 慌てて視線を変えたところが、不自然で、柚実が言ったことが正しいように思えた。

 でも希莉は「気のせいだよ」と余裕の笑みを浮かべ一蹴した。