なんていうんだろう、ビリビリとした電流というのか、ぞわっとした奮えというのか、とてつもない衝撃。

 教室の隅で、相田さんたちが声を上げている。

 また後で何か言われると思うと、益々居心地悪くなった。


 クラスの人達の目は教室を去っていく草壁先輩を追いかける。

 大勢が同じ方向を見ているその様は凄まじかった。

 その後はヒソヒソと私を見て話し出した。


「ちょっと、近江君」

「なんだよ、何、涙目になってんるんだよ」

 私の感情が高ぶって、処理できずに目が潤んでいた。


「なんで草壁先輩が来たのよ」

「そんな事言われても、俺だってちょっと胸糞悪いんだ。あいつ、時々俺に対して意地悪したくなるんだよ。用事を装って俺に会いに来たけど、もしかして、昨日何かあったのか?」


「えっ、それは、べ、べ、べ、べ、別に……」

「やっぱりあったんだな。あいつ、絶対何か企んでる。そうじゃなきゃこんな事しない」

「何、何を企んでるっていうの?」

 近江君はじっと私の顔を見ていた。


「な、何よ」

「ううん、何でもない。それより、草壁のせいで、俺の朝の時間が奪われちまった」

 近江君は手に持っていた本を私に露骨に見せた。

 その仕草が、私にも向こういけと言っているようで、少し気まずい空気が流れた。

「邪魔してごめん」


 私がしぶしぶ離れると、近江君はすぐに本を読み出した。

 振り返ってチラリともう一度見れば、近江君の表情が少し怒っているような、そんな機嫌の悪いものを感じた。

 私が自分の席に着くと同時に、相田さんが案の定寄ってきた。


「ちょっと、ちょっと、今のアレ何? 草壁先輩、遠山さんにウインクしたよね。ちょっとどういうこと、ねぇねぇ」

 なんとも鬱陶しいのに、私は強く何も言えない。


 私の周りはその真相が知りたい女子達に取り囲まれ、希莉と柚実とは挨拶もできなかった。


 皆、自分勝手過ぎる。

 それともこれが高校生の典型的なノリというものなのだろうか。


 燻った感情が体の中に蓄積されていくのに、私はそれを隠していつものようにヘラヘラとして、自分に群がる女子達と適当に付き合う。

 結局自分も情けない。


「ちょっと、いい加減に白状しなさいよ。草壁先輩と付き合ってるんでしょ」

 じれったいと、この場に及んでまた一人仲良くもないクラスメートが首を突っ込んでくる。

 あなたにそんな事言われる筋合いなんてないと、つい不快な気持ちを抱いてその女子を見た。

「ちょっと草壁先輩に言い寄られたからって、すぐに鼻にかけるのね」

 いやみったらしい言葉だった。


「井上さん、言いすぎよ」

 相田さんが肘鉄を食らわせて牽制していた。