「もしかしたら同じマネージャー同士でですか?」

 岡本さんは思いっきり溜息をついて、私を見つめた。

 無視しきれないと覚悟をしたようだった。

「何が聞きたいの? 加地さんの事?」

 とうとう開き直った。

 岡本さんの話では、加地さんと仲良くするのが難しく、常に鬱陶しがられてやりにくかったらしい。

 そのくせ、部員や先輩の前ではいい顔をして自分を売り込むので、岡本さんは誰にも相談することができず、耐えられずに辞めててしまったということだった。

 岡本さんも、ミーハー的な部分があり、サッカー部の人達がかっこよかったからという動機でマネージャーになったので、そういう部分が不純で加地さんに嫌われる要因だったのかもと自己分析していた。

 実際、チヤホヤされたのは岡本さんの方でもあったらしく、そういう部分も含め加地さんは気に入らなかったのかもしれない。

 そう考えれば、草壁先輩から直々に推薦されて入ってきた私にも当てはまる。

 加地さんにとって、自分より目立つ存在は許されないようだった。

 これで辻褄が合い、あの手紙の犯人も加地さんだと固まった。


 岡本さんに、厚くお礼を言うと、半ば同情の眼差しで「あなたも大変ね。でも頑張ってね」と労ってくれた。

 思わず苦笑いを返してしまった。

 一応すっきりとしたが、それを知ったからといって解決する補償はない。

 一番の原因が嫉妬からくるものと分かったとき、人間の嫌な部分に辟易してしまう。

 気の強い人程、そういう敵意を持ちやすくなるのだろうけど、気の弱い者が常に攻撃されるのが悔しい。

 それだけ自分が低く見られているという事でもある。

 私だって悔しくて仕返ししてやりたいが、加地さんと同じ土俵には立ちたくないプライドがあった。


 あーもうやだやだ。


 そして自分の教室に入れば、えらく教室内の雰囲気がいつもと違っていた。

 特に相田さんが乙女になって天にも昇るような顔をし、一点を見つめている。

 そしてソワソワ、ヒソヒソと同じ方向を見ながらキャッキャウフフの状態だった。

「おはよう、千咲都ちゃん」

 元気に声をかけられた方向を見れば、席についてる近江君の側で草壁先輩が立っていた。


 なぜここに……

 思わずのけぞった。