櫻井さんが草壁先輩を好きではなかった事も、かつて草壁先輩が櫻井さんを好きであったことも結構衝撃だったから、そんな事を聞いた後すぐに、『はい分かりました』、なんて納得するのも抵抗があった。

 草壁先輩だって、まだきっと櫻井さんのことで引きずってる事もあるから、それを払拭しようと血走った可能性だってある。


 櫻井さんは容姿共に申し分のない女子力の高い存在だから、そんな人の代わりになんてなれるはずもない。

 嬉しいのに、困ってしまう。


 それでもどこかで楽しんでいるようでもあり、苦しんでいるようでもあり、もう一度サッカーボールに顔面をやられて痛みに集中してしまいたいような複雑な心境だった。


 こういうとき、希莉や柚実に相談に乗ってほしい。

 やっと浮いた話が私にもできたのに、それを話せる友達がいないのが寂しかった。


「チーちゃん、さっきから小鉢に入れるだけで、全然食べてないじゃないの。何そのタワーのようなてんこ盛りは」

「あっ」


 気がついたら無意識で鍋の中のものを取るだけとって、積み重ねていた。

 またそれを鍋に戻そうとしたら架が嫌がった。


「自分で取ったんだから責任とって食べろよ」


 責任。


 いい加減なことができない。

 告白の返事だって同じだった。

「食べればいいんでしょ、食べれば」

 私はヤケクソになって頬張った。

 たくさん口に入れすぎて上手く咀嚼できずにいつまでもモゴモゴしていた。