「櫻井と身近じゃない奴ならそう書くかもしれないね。でも人間って結構自分の字を間違えられたら嫌だから、身近な奴が間違って覚えてたら絶対はっきり言うと思うんだ。友達なら意識して間違わないように書くはずだし」

「常盤さんは櫻井さんと仲がいいんですか?」

「うーん、一年の時は同じクラスだったけど、二年でクラスが離れたから、四六時中仲がいいって訳じゃないな。友達な事は確かだと思う。だけど、常盤は櫻井に執着しすぎなところが異常すぎるけどね」

「執着が異常……」


 親衛隊みたいなことをしてるだけに余程好きなのかもしれない。

 私だって女だけど、櫻井さんには憧れている。

 櫻井さんはやっぱり素敵な人だった。

 草壁先輩も櫻井さんの魅力を感じていたのに、なぜ報われなかったのだろう。

 こんなにかっこいい人なのに、なぜ櫻井さんは草壁先輩に興味をもたなかったんだろう。

 今度は反対にそっちの方が気になってきた。


「どうしたんだい、眉間に皺を寄せて。こんな話を聞いて、俺に幻滅したかい?」

「ううん、そんな事ないです。草壁先輩がそんな悩みを持っていたなんて信じられないくらいです。草壁先輩ですら悩みがあるんですから、私もちょっと勇気付けられたというのか、少しだけ頑張ろうかなって気になりました」