草壁先輩が再び席に戻ってきて、私の前にアイスティとガムシロップとストローを置いた。

 ドキドキとした落ち着かない気分を抑えつつ「ありがとうございます」と必死に伝えた。

「遠慮しなくていいって。ちょうど俺もコーヒー飲みたくなったんだ。特にこくのある苦さのものがね」

 そう言って、カップを一口すすっていた。

 私もガムシロップを入れてストローを差し込んで、口にする。

 アイスティーを口に含んだ時の味わいが、すっと体に馴染んでいく。

 「おいしい」と思った時、少しだけ気分が落ち着いた。


「さて、さっきの続きだ。小出しで申し訳ないね」

「いえ、その、大丈夫です」


「さっきも言ったけど、俺は櫻井に気があった。一年の時の話なんだけど、俺と櫻井は同じサッカー部員同士で、話す機会も多かったんだ。そのときに特別な感情が芽生えた。櫻井は積極的で、見掛けもいいから持ててた。自分でいうのもなんだけど、俺も女の子達から注目を受けて言い寄られる事が多かったんだ。それが自惚れとなって、俺は女に持てるって口には出さなくとも心の中で思っていた」

 面映いのか、草壁先輩は恥かしさを誤魔化すために、ここでまたコーヒーに口をつけていた。