たまたま単語を知っていただけで、勉強していると思われるのもあれだが、家庭教師とはいわなくても、英語に関しては分からなければ父が教えてくれるから、その点は大いに助かっているのは確かだった。

「ちょっと知ってただけだから、それよりも、近江君」

「ん?」

「一体私達ここで何をしてる訳?」

「理由が必要か?」

「はぐらかされたり、支離滅裂に話が飛ぶから、訳がわからなくて」

「それに関しては、俺もちょっと複雑だから、つい色々とごっちゃになってしまったけど、ただ、遠山と休み時間過ごしてもいいじゃないか。理由なんて俺にはどうでもいい。それに……」

 近江君はそこでじっと私を見つめていた。

「な、何?」

「俺の前では気を遣ってないだろ。息抜きだと思えばいいじゃないか」

「息抜き?」

「俺には気を遣わなくてもいってことさ。俺の前だと遠山は素直になれるだろ。この先もずっとそのままでいろよ」

 確かに近江君には慣れてしまって、気を遣うことはなかったが、改めてこんな事を言われると、恥かしくなってくる。

 常に気にかけられているようで、私の事を見透かしているようでもある。