私は眉根を寄せながら、近江君の顔をまじまじと見つめた。

 一体近江君は何が言いたいのだろう。

「サッカー部は楽しいか?」

「えっ?」

「あいつ…… 草壁…… と、うまく行きそうか?」

「はぁ?」

「これはちょっと野暮な質問だったな」

「近江君、一体何が言いたいの?」

「俺が言いたいんじゃなくて、遠山がどうするかだろ」

「近江君の言ってる意味がわからないんだけど、一体私にどうしろっていうの。恨みとか言って、近江君に怒りをぶつけろってこと?」

「やっぱり俺に対して多少の不満はありそうだな」

「もちろんあるわよ。近江君と係わってから変な方向に行ってしまったって思った事もあるし、こんな風に訳のわからない事を言われてイライラもする。もっと分かるように説明してよ」

 近江君はクスッと笑った。

「今の言葉、もう一度鏡見て言ったらいいぜ」

「ふざけないでよ。はっきり言ってよ」

「はっきり言って…… か。そうだな、何をはっきり言えばいいんだろうな。それより、お前こそ、はっきり言えばいいじゃないか、笹山に」

「えっ、希莉?」

「お前、猫かぶりすぎだぞ。まあ、俺は猫好きだからいいけどな」

 ──猫かぶり

 なぜだかその響きにドキッとしてしまった。

 この訳のわからない会話にとても違和感を感じ、どこか意図されたような近江君の企みがあるように深読みしてしまう。

『ふざけないでよ。はっきり言ってよ』

 自分が発したこの言葉。

 なんだろう、この感触。

 とても自分勝手に聞こえる。

「遠山、あまり悩むなよ。気楽に行けばいいんだよ。そういえばこういうの英語でなんていったかな、えっと」

「Take it easy」

「そうそう、テーキィットイーズィー」

 英語を意識した発音だった。

 私はぼんやりとして無言で遠山君を見つめてしまう。

「英語、得意なんだろ?」

「えっ?」

「なんかそんな気がしたんだ。もしかして家庭教師とかつけてるんじゃないのか?」