私達のやり取りを周りは静かに聞いて、トンボが不意に飛んで行ったような間が暫く空いた。

 しらっとした空気を皆感じ、先が続かなくなった。

 ちょうどタイミングよくチャイムの音が割り込んで、一足早く希莉はさっさと自分の席に戻ってしまった。

 体全身が心臓になってしまったように血がドクドクとして激しくドキドキする。

 無意識に胸を押さえ、私は息を沢山吸い込んでいた。

 希莉は何を思ってあんなことをいったのだろう。

 私は去っていく希莉の背中をじっと見ていた。

 周りの皆も席に戻りだし散らばっていく中、柚実は気を遣うように私の肩に優しく触れた。

「千咲都、希莉は寂しいんだよ。もちろん私も」

「柚実……」

 私だって、私だってとっても寂しい。

 だから元に戻りたくて、いつも努力してるというのに、なんでいつも頑なにそれを受け入れないで、強情なの?

 文句を言いたくなる気持ちがこの時ぐっとこみ上げて、喉元がつかえてしまった。

 喉をゴホンと鳴らして引っかかりを払うも、気分は優れなかった。

 そして自分も席に戻った時、机の上に何もかかれてないポストイットが一枚貼りつていた。

 偶然なのだろうか。

 始末するつもりではがせば、裏から走り書きの文字が現われた。

 昼休み
 図書室

 二つの単語だけが走り書きされていた。

 すぐさま、近江君の方を振り返れば、案の定憎たらしい笑みを向けていた。

 私はこの時、どんな風に彼を見ていたのだろう。

 ただポストイットのメモをくしゃっと握りつぶしていた。