朝、少しギリギリの時間に教室に飛び込めば、すでに辺りはがやがやとしていた。

 希莉も柚実もすでに来ていて、他のグループに混ざって話している。

 その中の一人が私に気がついて元気に「おはよう」と声を掛けてきたから、私は平然を装って同じようにそこに入ってみんなに挨拶をした。

 柚実とは喧嘩しているわけではないので、普通に接しられたが、希莉とはやっぱり気まずい。 

 それでも勇気を出して挨拶すれば、とりあえずは返事が返って来た。

 少しだけ状況が軟化したように思え、同じくその少しだけほっとする。

 希莉もまた無理をして戸惑っているのか、以前のようなノリはなかったが、皆の前に居る以上、無視する事はしなかった。

 無視をされたらそれこそショックであるが、何せ、いがみ合ったわけではないから何が原因でこんなに仲たがいをしているのかがわかってない。

 希莉は理由を教えてくれないし、柚実もその点は関与していないという状況で、馬鹿げた上辺だけの接点が生まれるこの瞬間が非常にもどかしく、どんどんとお互いの溝が広まって近くにいても非常に遠い存在になっていた。

 希莉と仲良かった時が懐かしいというより、執着心がついてあの頃に戻りたいと切に願う自分にイライラしてくる。

 嫌われてしまったのか、機嫌を伺うことで振り回されることに腹立ちも現われ、それは自分でも言い表せない感情が渦を巻いていた。

 それでもひたすら笑顔を振舞って、なんとかいい様に思われて希莉に好かれようと努力している自分がいる。

 それが痛い自分であるとも充分承知してるけど、この馬鹿げた行為とそれでもなりふり構わない自分の努力がなんだか虚しく、また無理に作った笑顔で顔が痛かった。

 だけど、希莉は嫌っているわけではなく、ひたすら様子を伺っているようで無難には接してくれているみたいだった。