「ほら、先輩来たよ!行っておいで」


千夏ちゃんの好きな人がきたから、背中を押す。

玉砕覚悟だとかなんとか鼻息荒くしてるけど、

…振られる覚悟なんか、本当はできてないんだろうな。


好きって、よくわかんないけど。

友達の恋は、やっぱり実ってほしい。


さっそうと…っていうか、荒々しく?歩いていく背中に願いをたくす。

その姿はごった返す人混みにまぎれて、すぐに見えなくなった。



だから…油断してたんだと思う。


あのとき、人混みから目をそらしてなんかなかったら。

気づいていなかったら、未来はまた違ったはずなんだ。



その瞬間は、唐突に訪れた。