「、、、嫌です。離れたくない。」


桜井さんの目から涙が一筋零れる。



「うん、ちゃんと言えたね。

自分の幸せを考えられない人が、他人を幸せにすることは出来ないよ。
泣きたいときには泣いたらいいし、嫌なら嫌って言っていいんだ。

自分のことも大切にしてあげてね。」




思い詰めていたんだろうな。



涙を流す桜井さんの気持ちを考えると胸が苦しくなる。




「嫌なことばかり思い出させちゃってごめんね!

桜井さんの気持ちが悪い方に向かないでほしいなと思って、お節介しちゃった。」



明るく笑ってみせる。



泣いていいとは言ったものの、あまり長い時間泣かすと後で湊に怒られそうだ。



呼吸も浅くなってるし。





「いえ、ありがとうございます。

中島先生のお陰でぐちゃぐちゃだった心の中が少し整理できた気がします。

なんか元気出てきました。」




お、いつもの桜井さんの笑顔だ。




「元気出てきたならプリン食べよっか!

食事はちゃんと取らないとダメだよ~。」




見透かしたように言うと少しビックリした表情を見せる桜井さん。




「中島先生はスゴイですね。カウンセラーみたい。」




「小さい子を診るには心のケアも大事だからね!
仕事上、この子はどんな気持ちなのかな~、どんなこと考えてるのかな~って考える機会が多くて、人を観察するの得意になっちゃったよ!」



自慢気に言うと、クスッと桜井さんが笑ってくれる。




「中島先生もやっぱりプロなんですね。仕事に対しては凄く真面目!」




「え~、やっぱりとか、仕事に対してはとかさっきから酷くない!?」




談笑しながら二人でプリンを食べる。




湊が戻ってきたのは、もう少し後、とっくにプリンを食べ終わった頃だった。