その男子は、さっきの男子だった。

長めの前髪の奥から見える大きな瞳。中性的で綺麗な顔立ちだと思った。

「あ……」

小さく漏れてしまった声。

幸い、周りの人達には聞こえていなかったようだけれど。

その男子には、ばっちり聞こえてしまったよう。

少し不思議そうに、まばたきをする男子に、わたしは顔の前で小さく手を振る。

何でもないよ、のジェスチャーなんだけど。

どうか、伝わって…と願いを込めると。

男子は顔の前で手を合わせ、

ごめん。

口をそう動かした。