「いや、人によっては、名字呼び捨てが嫌な人っているじゃん。明日香は、よく分からないけど…」
「ううん、別に、嫌じゃないから、大丈夫だよ? あ、でも、今野っていう名字の人とかいるのかな」
「ど…うだろ。分かんないけど、」
「でも、ま、大丈夫!」
「そういえば、相澤は、今野のこと、みさ、って呼んでるよな」
「そうだね、なんか、いつの間にかみさになってたかも」
美咲って呼ぶのは、親ぐらいかなぁ、と笑いながら言うと、咲真くんは、びっくりしたような顔になった。
「そっか。俺、今野の下の名前、久々に聞いたかも」
「ええ!? そりゃ、みんな、みさ、とか、みさちゃんって呼ぶけど…」
「うん。自己紹介以来かも。美咲って」
“美咲”
咲真くんが何気なく口にしたわたしの名前。
その声は、優くんがわたしの名前を呼ぶ、声に似ていて。
そう、すごく…似ていて。
「今野……?」
気付けば、私の目からは涙が溢れていた。
