「付けて、くれてるんだ。ありがと。…そういえば、今野って、足速いよな」
ふわっと笑った咲真くんは、わたしの方を見る。
「いや、そんなことないよ。陸上部に入れるほどじゃないもん」
「え、でも、中学では、陸上部じゃ……」
「え? なんで、知ってるの?」
「あ………」
しまった、という顔をした後、咲真くんは、なぜか、さみしそうに笑った。
「いや、ちょっと、知り合いから聞いて、さ」
「そう、なんだ……?」
そう、わたしは、中学のころは、陸上部だったんだ。
専門は短距離走。
優くんが亡くなってまもなく、部活をやめてしまったけど…
「えと…、咲真くん、最近、陸上部の女の子と一緒にいること多いよね」
ちょっとぎこちない空気を吹っ切るように、私が言うと。
「あ、ああ、明日香?」
「あすか? 名前呼びなんだ。仲いいね」
首をかしげて尋ねると、咲真くんは、うーん、とうなった。
「水沢 明日香(みずさわ あすか)だろ。何か、名前でよんでほしい、って言われたから。…今野も名前呼びの方がいい?」
「え?」
いきなりの質問に、ぽかんとしてしまうわたし。
