「別に無理してアイツを諦めなくていい。
だが、もし泣きたくなったら
俺の胸を貸してやるから。1人で我慢だけはするな」
お兄さんは、そう言ってきた。
「えっ……?」
その言葉に驚いてしまう。
俺の胸を貸すって……
「じゃあ俺は、行くけど
明日会社でな」
行っちゃう……。
カツカツと足音が遠ざかって行く。
ま、待って!!
私は、思わずドアを開ける。
「あ、あの……待って下さい!!」
どうして開けたのか分からない。
でも、その意味を知りたい。
行かないで欲しいと思ってしまった。
すると振り返ってくれるお兄さん。
「なんだ……開けないんじゃなかったのか?」
相変わらず憎まれ口を叩いてくる。
えっと……どう言ったらいいか戸惑ってしまう。
勢いで開けてしまったから。
それに恵梨香のお兄さんなのに……呼び止めるなんて
何だか変だし。
オロオロと戸惑っていると
恵梨香のお兄さんが
「いちいち迷うな。本能のままに動け。
ほら、胸なら貸してやるからこっちに来い!」
そう言いながら私に手を差し出してくる。
本能……。



