そして、土手に到着するやいなや

「うひゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁ」

と奇妙な声を叫びながら斜面を走って駆け下りて、あの大きな木の手前でその勢いをうまく殺すように器用に前回りをして、そのまま仰向けの状態になった。

僕が彼女の突然の奇行に呆気にとられていると、彼女は早くおいでと言うように

「しょうくーーーーーーん!」

僕の名前をあらん限りの大声でまたもや叫んだので、僕は足早に彼女のもとへと向かった。

いくら彼女の声が僕くらいにしか聞こえないものだとしても、流石にあんな風に呼ばれたらいたたまれない気持ちになる。

そして彼女より幾分か遅れて木のもとにたどり着くと、彼女は仰向けになっていた体を起こして立ち上がり、草土一つついていない衣服を汚れを落とすように叩いて、一息つくと僕に背を向けるようにした。

僕は彼女の正面に回ろうとはせずに、その場で彼女の背中を見つめる。
そんな僕を気にする風でない彼女はふいに声を出した。

「さっきの――――

両親とのことだけどさ」

「―――うん」

「確かにああでもしなきゃあ私は言いたいことも言えなかっただろうし、両親も信じてはくれなかっただろうけど、でも、お礼は言わないから」

「うん、それでいいよ。

僕がレイの知らないところで勝手に計画して、実行しただけだから。

それに結果はどうあれ、レイの家族を騙したことに変わりはないからね」

レイはそう、と頷いて空を見上げた。

僕もそれにつられるようにして空を見る。