君がうたう七つの子

それにあの嘘は必要なものだ。

彼女にはどうしても聞きたいことがある。それを聞き出しやすくするためにも、レイの親戚という立場は重要になる。

しかし、その話を今するのは早計だ。

だから僕は、別の疑問を解消することにした。

「それなら、どうして今まで来なかったの?

僕は君も知っての通りここに毎日来ているけれど、レイのお父さん以外誰も見たことはないよ」

レイの話だけ聞いていれば誰も来ないのも納得のいく話だが、目の前の彼女は噂を信じていないという。

なのにここに来なかったのは何故なのか。

少しきつい言い方をしてしまったが、レイのあんな悲しそうな思いと表情を見た後では、それも抑えられない。

もしどうでもいいような理由を言ってきたら、僕は怒るだろうが、それを自制しようとはしないだろう。

「約束したから」

そう思って、自然と眉を寄せていたであろう僕に怯むことなどなく、彼女は一言そういった。

”約束”

突然出てきた、けれど最近妙に聞く言葉の真意をはかりかねて、僕はじっと彼女を見つめる。

「レイと一緒の高校に行こうねって約束したから。

あの日、レイが死んじゃったあの日に、レイから

『お母さんと進路の事で喧嘩しちゃった』

って連絡が来たの。

だから、せめてあの子が行きたがっていた高校に行こうって決めて、毎日勉強漬け。

希望の高校は私が行くには偏差値が高いからね、必死だよ」

「だから、来なかったの?」

「約束したから」

二回目の”約束”