隣に住むのは『ピー…』な上司

エレベーターのボタンを押そうとして止めました。
誰かと二人きりになったりしたら、それこそパニックを起こすかもしれないので。



(階段にしよう)


カツン、カツン…と足音を響かせて歩きだす。

最初のうちは調子良かった。
でも、3階あたりから息が上がりだした。



「…っもう、下で待っててくれたらいいのに」


逆恨みしながら上っていくと課長の声が聞こえてきた。


「……歩いてきたのか」


呆れた顔つきになっています。


「運動の為です」


負け惜しみみたいに呟く。



「…ふぅ」


5階に着いて大きく息を吐く。


「お疲れさま」

「全くです」

「じゃ行こうか」

「えっ…」


待つっていうのはナシなの?
どれだけ勝手が良すぎるの。


「待って下さい。課長」


こっちは膝が震えているのに急がれても困る。


「ほら」


何気なく出された手が引っ張る。

腕を持たれたと言うのに胸がドキンと弾んだ。


卒倒もしない。

怖さよりも動悸がするというのも変な感じ。



「乗ったらシートベルトを締めろよ」


当たり前のことを言う。


「子供じゃありませんから」


車に乗ったことくらいはあります。


「そうだった。すまない」


笑いを堪えている。

どこかバカにされている気がする。

課長にしてみたら、私は子供みたいなもんなのかもしれません。