隣に住むのは『ピー…』な上司

翌日、課長から電話が入ったのは私が更衣室で着替えをしている時で。



「白鳥くんか」


声に反応して思わず肌蹴ていたブラウスの前を閉じました。


「は、はいっ!」


ビックリして声を上げる。
辺りにいた女子から注目され、慌てて小声に変えた。


「な、何でしょう」


…じゃない。
待ち合わせ場所を指定してきたに決まっています。


「オフィスを出たら隣のパーキングビルに来てくれ。5階に車を停めてある」


「車?…あ、あの、か……」


課長って言葉はタブーだ。
誰が聞いてるかわからない。



「わ…わかりました」


淡々と返事する。
あわよくば断ろうと思っていたのに、それもできないで了解する。



(こんな普通の格好で行ける場所ならいいけど…)


淡いベージュのブラウスに黒のパンツルックに着替える。
冷房よけに…と引っ掛けてきたのは、サーモンピンクのカーディガンだ。



(パーキングビルに来いってことはマイカーで来てるってこと?)


マイカー持ってたんだ。
ちっとも知らなかった。


ロッカーに備え付けられた鏡でメイクを直す。

直したからと言って、大して美人になる訳でもない。

直さないよりはマシ。その程度のことです。


あのイケメンな課長の側に立てば霞むのは確か。

それでも仕様がないと観念しながら隣のビルに入っていった。




(5階ね)