隣に住むのは『ピー…』な上司

「俺はもういい」


アッサリと拒否。


「そうですか」


何よ…と思いながらテーブルに戻す。


「ビールよりそっちをくれ」


指差される自分のグラス。


「これ?オレンジジュースですよ?」

「いい。少しは違うもんが飲みたい」

「じゃあグラスを……」


別のグラスを取ろうと手を伸ばしたんだけれど。


「君のでいいよ」


さっと取り上げられてしまった。


「あ……」


という間になくなっている。


「課長!」


間接キスとかいうの?これも。


「甘いな」


当然ですよ。ジュースだから。


「返す」


返されても困る。


(もうっ…)


何だか顔が熱くなる。
課長には昨夜から振り回されてばかりいる。


受け取ったグラスにオレンジジュースが注がれる。
飲むのも恥ずかしい気がして、じっと眺めてしまった。


「飲まないのか?」

「…もうお腹タプタプです」


一応の言い訳。
課長を見るのが怖くて下を向いたまま答えた。

側に立ってなくていいからどっか行って。
私は一人の方が気がラク。



「白鳥くん…」


頭の上から呼ばれる。


「はい」


俯いたまま返事する。


「その……今回のことで礼をしたいんだが……」


礼?


「あ…ピー……」

「しっ!」


素早く唇を止められる。
ピーチちゃんって言おうとしただけなのに、課長は人差し指を押し当てた。