「ピーチを捕まえてくれた礼だ。食べろ」


ほらっと袋を差し出された。
そのまま袋を持つ手を離すから私は慌ててキャッチした。



「何ですか、これ」


お礼なんていりません的な気持ちで目線を下ろすと、袋の中身は黄色や緑、縞模様のボール状の物が入っている。





(メロン…?)


どう見てもメロンのように見える。
最低3種類、独特の甘い香りが漂っている。


こんなに沢山どうして…という気持ちで見上げると、口元を手で覆った課長がのっぺらぼうな顔をしていて。


「そのメロンの加工場を視察してきたんだ」


1週間の出張理由を簡単に述べると、すぐに立ち去ろうとする。



「ま、待って下さい!」


ぎゅっとワイシャツの背中を握りました。

後ろに詰んのめった課長は、振り向きざまに私を睨んだ。



「こ、困ります!こんなに沢山頂いても……」


誰かに配るにしても、貰った経緯を話さないといけない。

ただでさえオフィスでは目立ちたくないのに、これを持って行ったら余計でも目立つ。



「ご自身で頂かれたらどうですか?私は一玉あれば十分ですので」


是非ともご辞退しようとした。
私の必死な気持ちを知ってか知らずか、課長はムッとした表情になり……


「俺は1週間、散々食べさせられてきたんだ。今更メロンの顔なんか見たくもない」


なんて勿体ないことを……と言うか、私が言っていることも同じなんだけれど。